最先端の教育を受けて世界で通用する技術者になれるのは
ほかにはない強みです

野津 光夫(のづ みつお)さんForefront Studies Program

株式会社不動テトラ 地盤事業本部国際部 担当部長
(1982年卒業,2015年執筆)




地盤改良の高い技術を使い海外に貢献する仕事をしています

 私は現在,所属する会社が得意としている「軟弱地盤改良」の技術を海外へアピールし,受注へ結びつける仕事をしています.
 軟弱地盤改良とは,そのままでは建物を建設したときに沈んでしまうような軟弱な土地を,様々な方法でしっかりした土地に改良する技術です.たとえば,やわらかい粘土の地盤に砂やセメントで固めた杭を打ち込んだり,ゆるくて安定しない砂の地盤を機械で振動させ,砂と砂の間のすき間をなくして,地震による液状化を防いだりする方法などがあります.
 地盤改良の方法には,日本が先駆けて開発した工法も多くあります.とはいえ,地盤の性質は,日本と海外では異なる部分もあり,一筋縄ではいかない場合も少なくありません.たとえば,東南アジアなどには,水を吸い込んでふくらむ「膨張性粘土」という粘土があります.これをセメントで固めるには,高い技術と発想の転換が必要です.
 このように,私たちがもつ技術を使い,いかにうまく対処していくかを考えることが,この仕事のやりがいのひとつだと思います.


名古屋大学に入って地盤工学の奥深さにひかれた

 もともと自然が好きな私は,大学を卒業したら,現場で土木エンジニアの仕事に就くことを目指していました.入学前は「ゼネコンの社員として現場で生きるのだろうな」と何となく思い描いていました.
 ですが,大学で地盤工学という学問に出会い,そのおもしろさや奥深さに強くひかれた私は,大学院で地盤工学を専攻.研究室ではつねに最先端の研究がなされていて,担当の先生方もたいへん魅力的に見えたものです.
 大学院前期では,軟弱地盤の動きを現場の観測データやコンピュータを使って予測したり,FORTRANというプログラム言語を使ってプログラミングを行ったりしていました.土の力学やその動きを表現するモデルについてじっくり勉強できたことは,その後大いに自分の役に立っています.
 最近は仕事を通して,海外技術者との交流もさかんです.その中で,名古屋大学教授の浅岡先生の提案された「沈下予測法」が,世界の多くの技術者に実際に使われていることを初めて知りました.大学の研究が,地盤改良技術の解明と理解に大いに役立ったと思える瞬間でした.


仕事を通して社会に貢献できるのは技術者冥利につきます

 この仕事を手がけて約30年になりますが,いくつか印象に残る仕事があります.
 たとえば,およそ20年ほど前,千葉県浦安市で,「液状化対策工法」を手がけた中学校は,2011年の東日本大震災で液状化の被害を受けませんでした.それを聞いたとき,仕事を通して社会に少し恩返しができたような気がしたものです.
 また,セメントで土を固める処理をコストがかからない工法で行う技術を開発し,ベトナムのコンテナ埠頭に用いたのですが,これまで有害な沈下は起こっていません.このような仕事は,技術者冥利につきるものです.
 ほかの専門分野と同様に,地盤改良技術の分野も,世界の会社との競争にさらされています.日本人には言葉の壁もありますが,専門会社として,世界に認められる存在でありたいですね.また,技術者としても,各国の技術者と交流して,自分のレベルを上げていきたいと思っています.
   


名古屋大で地盤工学を学べば世界で活躍できる技術者になれます

 世界では,地盤技術者のことを「Geotech-Engineer」と呼んでいます.この分野は,経験を積むことが大事な面があって,熟練の技術者は世界中で不足している状況です.技術者の募集もひんぱんに行われていて,優秀な地盤技術者は世界中で引っ張りだこです.
 名古屋大学の地盤工学分野は,世界でも有名で,大学でも最先端の教育を受けることができます.高校生のみなさんが,将来,地盤技術者として世界で活躍したいと思うなら,ぜひ学ぶことを検討してみてください.

 (写真)2013年まで携わったフロリダ州の空港の締固め現場で,海外のエンジニアと.仕事では,何よりコミュニケーションと笑顔が重要です.