専攻長挨拶

専攻長

 2017年度より、工学部・工学研究科の組織改編に伴い、大学院の専攻名称を社会基盤工学専攻から土木工学専攻に改めました。土木工学を英語でいうとCivil Engineeringとなります。また良好な社会を構築するために環境の重要性が増しており、英語での専攻名は、Civil and Environmental Engineeringとしています。

 Civilは、市民や文明という意味がありますので、土木工学が扱う社会インフラは、現在の文明社会を支える基本的な装置といえます。社会インフラは、自然の作用を制御し国土の保全や利用を行うダム・河川・海岸保全施設、生活環境の維持を行う上下水道、電力やガス施設、通信施設などのライフライン、経済活動の基盤となる道路、鉄道、港湾空港などの交通運輸施設、と多岐に渡ります。また、土木工学では、都市・地域・国土計画、さらにはエネルギー問題や地球環境問題までも扱っており、文明社会を支える学問と言うことが分かっていただけると思います。

 大規模な地震や台風によるインフラ施設の被害、インフラ施設の老朽化による社会不安など、インフラ施設が社会に果たす役割をあらためて考えるような出来事が近年複数起きています。このような出来事からインフラ施設などは、一度インフラ施設の機能低下や破壊が生じれば、日々の生活や社会活動に及ぼす影響が非常に大きいことが認識されたと思います。インフラ施設がその機能を果たし快適な社会活動に貢献することは当たり前ですが、そのあたりまえのことは実は強固なシステムでできあがっているのではなく、災害や老朽化などの問題を含みながら不安定な状態で維持されているという事実も受け入れる必要があると思います。

 社会の不安定さは、災害や老朽化だけで生じるのではありません。様々に高度化した現代社会では多くのシステムがネットワーク化され直接的・間接的に相互依存をしています。都市機能などは現代社会の縮図かもしれません。高度化したが故に相互依存性は不安定な状態で維持され、その全体像を理解することも困難になっています。さらには環境問題など、単に地域に留まらず世界的な視点で考えなければいけない問題も多く存在しています。

 土木分野に関係する人はこのような社会活動への影響を及ぼすようなことがないように、個々のインフラ施設に留まらない都市機能の構築や維持管理、さらには持続的な社会となるために世界的視点での開発と環境問題に携わってきています。土木分野の役割を多くの皆さんが認識することは、土木の見える化ということで意義があることですが、日常的にはその姿を見せずに安全・安心に社会活動が行われることが重要だと思います。土木分野の重要性が見えていなくても、その役割は広くまた責任は大きいものです。

 昨年、アフリカのエチオピアからの留学生と土木工学を選んだ理由を聞いたら、「医者よりも多くの人の命を救える仕事だから」と答えていました。高校生の方には多くの人を救うために土木の世界に是非足を踏み入れてください。また、名古屋大学工学研究科土木工学専攻は、世界有数の土木分野の拠点として、教育・研究・社会活動を通してその役割と責任を日本だけでなく世界に対して果たしていきます。

土木工学専攻 専攻長 中村 光
平成30年4月1日

本専攻・本プログラムの紹介