土木工学は社会に貢献でき,
自分の将来を広い視野で模索できる分野です

三輪 富生(みわ とみお)さん

名古屋大学 エコトピア科学研究所・
工学研究科 社会基盤工学専攻 准教授
(1998年卒業,2015年執筆)




より安全で快適な社会を築くための交通システムの研究をしています

 私の専門は「交通計画」と呼ばれるもので,より安全で環境に優しく,快適な交通社会を実現するための研究を行っています.たとえば,渋滞を減らすには,どんな交通情報をどのように提供すればよいか,道路の通行料金はどう設定すればよいか,将来はどんな車がどれくらい普及しそうかなど,交通についての様々な課題を見つけ出し,調査や実験,シミュレーション計算などを通して検証していきます.
 現在,少子高齢化によって,高齢者の交通事故が増えたり,地方に住む人たちの移動手段が限られてきているなどの問題が生まれています.これからは,そのような人たちの移動を楽にし,生活を豊かにするための交通システムの研究が必要です.GPSなど,近年大きく発展した情報技術を活用して,事故の危険を減らしたり,周りの車の動きや運転経路を予測して安全な運転方法をドライバーに提示したりして,人々がより安全に生活できるための交通のしくみを考えたいと思っています.


「自分の可能性を広く持っておきたい」,そんな気持ちで土木工学を選びました

 高校時代,受験生時代を通して,自分の将来についてあれこれ考えていましたが,受験の直前まで,「これだ」という進路を見つけることができませんでした.
 ただ,たとえば医学部や薬学部のように,限られた専門分野のことを深く学ぶよりも,工学部のように,幅広い領域にまたがる分野のことを学びたいなとは考えていました.その方が,将来の選択肢が拡がると思っていたのです.
 また,工学部の中でも,機械工学や材料工学より,土木工学など,橋や道路などの大きな構造物を作る仕事に関連する分野が自分には合っているのではないかという,ばくぜんとしたイメージも持っていました.大規模な工事を通して,社会的な基盤を整備したり,人々のくらしを豊かにしたりすることを考えるのだろうなとも想像していました.


入ってみて始めてわかった,土木工学の広さ・奥深さ

 土木というと,入学前は「ヘルメットをかぶって,大きなビルや橋を作っている」というイメージでした.ですが,実際は,そんな簡単な一言でまとめられるようなものではありませんでした.
 授業ではまず,数式がたくさん出てくるのにびっくりしました.土木工学では,構造物や地盤の強さを計算したり,シミュレーションをしたりする場面が多く出てきます.そのたびに,今まで見たことのない専門の数式が出てくるのです.
 また,土木工学の中に,「都市計画」や「交通計画」といった専門分野が存在することにも驚きました.一口に土木といっても,実は社会学や経営学など,様々な分野につながっていることは全く想像がつきませんでした.
 博士課程で大きなプロジェクトの一部を手がけたときのことも印象に残っています.指導教授から,名古屋市周辺のタクシー数百台分の走行データ(GPSデータ:プローブカーデータ)を渡されたのですが,パソコン上で電子地図と重ねて表示したとき,タクシーの走行履歴が一目でわかることに気がつきました.「このデータをうまく使えば,渋滞の発生や走行ルートの変化が分析できる!」と,とても興奮しました.プローブカーデータは,今でこそ研究や実務で幅広く使われていますが,当時研究に使っている人はほとんどいませんでした.試行錯誤しながら,また,一喜一憂しながら研究を進めたことをよく憶えています.


土木工学を学ぶことで社会の様々な分野で活躍できる

 土木工学は,社会を豊かにするための学問だと思います.この分野では,大規模なインフラ整備をはじめ,都市問題や環境問題などを解決するための様々なことが勉強できます.
 「社会を豊かにする」ということは,いろいろな分野で,人々のために活躍できるということも意味しています.土木工学は,将来の職業選択の幅が広いことも特長です.高校生のみなさんは,今のうちから,どんな学科に行けばどんな職業に就けるかを調べておくとよいでしょう.