入学を希望される皆さん,こんにちは.
この4月から環境土木工学コースのコース長を務めます戸田祐嗣です.
本コースを希望される方,名古屋大学工学部に入学を希望するが,まだ迷っている方,本コース,「環境土木工学コース」を強く,強くお勧め致します.
土木とは,いろいろなイメージを持つと思いますが,人類が,自然環境の中で生きてゆくために必要な基盤(社会基盤)をつくらなければなりません.それも,できるだけ多くの,みんなの幸せを考えなければならない.人々が安心して快適な生活を営むための社会基盤を整える学問といえます.
ちなみに社会基盤とは,英語で「インフラストラクチャー」といい,下部,基盤を意味する「インフラ」と,構造を意味する「ストラクチャー」の合成語であります.下部構造,基盤構造といった社会全体の基盤,資本を支える構造を意味します.道路,橋,トンネル,鉄道,上下水,電気システム,人工島,,,どれも人間が生活を営むためには必要な施設,基盤です.大学院の「社会基盤工学」の名前の由来も納得できるでしょう.
塩野七生さんの書籍,ローマ人の物語X「全ての道はローマに通ず」に書かれているのですが,古代ローマ人は,ハードもソフトもインフラストラクチャーを重視し,「インフラの父」と呼ばれているほどの民族だそうです.彼らはインフラを「人間が人間らしい生活をおくるためには必要な大事業」と考えていました.古代ローマが繁栄した理由のひとつと考えてもいいでしょう.
ハードとしてのインフラストラクチャー(土木構造物)を安全で環境にも配慮して作る,維持すること,ソフトとしてのインフラストラクチャー(都市計画,交通計画,国土デザイン)をより効率的に築く,それが土木技術です.ですから土木技術は,人間がこの世に誕生した時から始まり,人間が生活し続けるうちはなくなるものではありません.その根底には,「皆のために」という思想,つまり「自己中心的ではなく他人への思いやり」という『人間のやさしさ』が根底に流れていると思っています.
また土木は,国土というとてつもなく大きな材料・対象を,孫のそのまた孫の世代のことまでも思いやりつつ,扱ってゆく学問です.空間的にも,時間軸でも非常に大きなスケールの学問で,土木を学ぶということは,いかなる分野への応用も可能だと思います.
ところが,今,この「人間らしい生活」が脅かされています.30年以内には発生するといわれている南海トラフ巨大地震,地球温暖化が何らかの要因になっている異常気象,豪雨・台風なども最近珍しくない災害になっております.21世紀は災害の世紀とも言われております.さらに,インフラストラクチャーの老齢化に伴う維持更新管理,人口減少・少子高齢化,エネルギー問題も含めた地球環境問題も今後とも取り組まねばなりません.一方で途上国への国際貢献も土木の大きな役割です.
これらは,これからの世代が解決しなければならない課題であり,それを誰がやるのかというと,やはり思いやり,そして優しさを持った土木技術者がリーダーとして行っていかねば,たちまち「人間らしい生活」はできなくなります.日本を,世界を取り巻くいろいろな問題を,是非,環境土木工学コースに入学して,君達の力で解決していって欲しいと思います.