卒業生からのメッセージ

安心、安全で快適なまちづくりで社会に貢献できます

長江 ちほ(ながえ ちほ)さん名古屋市緑政土木局港土木事務所
(2007年卒業,2018年執筆)

長江 ちほ(ながえ ちほ)さん 名古屋市緑政土木局港土木事務所
まちを守る道路パトロールカーと。パトロール中は気が引き締まります。

『安心、安全で快適なまちづくり』で市民の生活を支える土木事務所

私が勤務しているのは、名古屋市緑政土木局港土木事務所です。

土木事務所というところを皆さんは知っていますか?私は就職するまで一度も訪れたことも、電話をかけたこともありませんでした。

けれど、働いてみると実は私たちの生活にとても身近なところです。

なぜなら、皆さんが毎日歩いている道路や橋、近所の公園や緑地、河川や水路など、誰もが関わりを持っている社会基盤を整備し維持管理しているのが土木事務所なのです。

道路に穴が開いていないか、街路灯が消えていないか、街路樹が伸びていないか、遊具が壊れていないかなど、日々パトロールを行って危険なところがないか確認しています。また、市民の方から「〇〇を直してほしい」や「×××に困っている」とお問い合わせを受けることもあります。それらを通じて危険なところを見つけて直す、土木事務所は“まちの健康管理をするお医者さん”のような存在なのです。

現在私が担当しているのは放置自動車の撤去、街路灯の設置工事、公園の工事や維持管理、河川の環境維持です。放置自動車の撤去など、およそ土木らしくないことも、まちをあるべき姿で維持する大切な土木の仕事です。

社会基盤は造ったら終わりではありません。そこにあることが当たり前のように感じる施設も、実際はたくさんの人の手によって維持管理され、皆さんの生活を支えています。

社会を支える一翼を担っていると思うとやりがいを感じますし、市民の方から直接「ありがとう」とお声を掛けていただくこともあります。そのときは率直に人の役に立てているのだな、とうれしく思います。構造物ばかりに目が行きがちですが、そこに暮らす市民の方との付き合い方も非常に大切で、どのような仕事も人対人が基本なのだと実感します。

土木を目指したきっかけ

今やすっかりドボジョ(土木女子)の仲間入りを果たした私が土木分野を目指したのは、高校3年生のときでした。進路を決めかねていた折に、高校の担任の先生に「街をつくる仕事もあるぞ」と言われて興味を持ったのがきっかけです。「街をつくるなんて面白そう!」と、地元愛知でまちづくりについて学ぶことができる、本学を目指しました。

入学してみると土質工学、水理学、構造工学、材料工学、交通工学など、様々な分野があることに驚きました。また座学に加え実験の講義が多いことが印象的で、実際に自分の手で材料や機器に触れ実験を行い、目の前の事象について考察することでより主体的に学ぶことができました。本学で学んだ土木工学の基礎は、現在工事の設計や監督をする上で非常に役立っています。

大学時代で特に思い出深いのは大学4年の卒業研究です。私は水理学研究室で、生態系が河床に及ぼす影響について研究しました。生態系の中で着目したのがカマツカという淡水魚です。「土木で淡水魚!?」と驚かれるかもしれません。しかし、社会基盤はそこに暮らす生態系と密接に関係しており、生態系の生物活動は社会基盤へ影響を与えるひとつの要素なのです。研究ではカマツカを実際に飼育し、砂を敷いた実験水槽を用意して放流する実験を行いました。先生方や先輩、友人らの助言や協力を得て、なんとか卒業論文を提出した日の朝の達成感は忘れられません。また、研究を進めていくプロセスや姿勢は仕事に通じるものが多く、社会に出ていく上での基本を学ばせていただいたように思います。

今でも行きつけの水族館でカマツカが泳いでいるのを見ると、研究室での日々を懐かしく思い出します。

ワーキングマザーとして奮闘しています

個人的なことですが、現在は結婚し二児の母親です。家事・育児と仕事の両立の難しさを痛感していますが、それでも今も仕事を続けられているのは、職場の上司や同僚の助けや理解があるから、そして働ける制度が確立しているからだと思います。もちろん家族の協力は不可欠ですし、保育園のお迎えで私を見つけて笑顔で駆けてくる子供たちを見ると、癒され元気が湧いてきます。

まだまだ結婚や子育てなど想像もつかないという方がほとんどだと思いますが、生涯働き続けられる職場環境というのは、男性女性問わず魅力的なものではないでしょうか。

慌ただしい日々の中でも、土木の分野で仕事を続けられている幸せを噛み締めて、これからも奮闘していけたらと思います。

高校生のみなさんへ

高校生の皆さんの可能性は無限大です。その選択肢が広いがゆえに将来に迷うこともあると思います。そんなとき、少しでも興味を持ったことがあったら、そこへ一歩足を踏み入れてみてください。自分では予期しなかったことが待ち受けているかもしれません。私もまちづくりをきっかけに土木の分野に飛び込みましたが、本学に入ってからその幅広さ・奥深さを知り、現在の仕事に就くに至っています。

また、土木は男社会だからと躊躇している女子のみなさん、人数はまだまだ少ないですが土木分野でも女性が活躍できる時代です。私もそんな先輩・後輩に励まされ、今日も頑張っていますよ。

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