卒業生からのメッセージ

地図に残るような大きな仕事をできるのが土木の醍醐味です

蛭川 理紗(ひるかわ りさ)さん中部電力株式会社
送変電技術センター土木建築課 工事担当
(2008年卒業,2018年執筆)

蛭川 理紗(ひるかわ りさ)さん 中部電力株式会社 送変電技術センター土木建築課 工事担当

変電所で変圧器などの機器の基礎を作る仕事

私は電力会社で働いています。電力会社での土木の仕事は、水力発電所・火力発電所・原子力発電所などの土木設備を作ったり、設備を維持管理していくことが主な仕事ですが、その中で、私は発電所で作った電気の電圧を変換するための変電所で、変圧器などの機器の基礎を作る土木工事の調査・設計や発注、施工管理を行っています。

設計を行う前に、現地の測量や地質等の調査を実施し、変圧器などの機器条件を元に基礎杭の設計や基礎の大きさ、配筋などの構造計算を行い、設計を作成します。

その設計図を構造物にするために必要な工事費を算出し、発注します。

施工管理面では現場で構造物が設計図通りに作られているか、工程通りに工事が進んでいるかなどを現場に出向き確認します。

このように計画から調査・設計、施工管理に至るまで携われるのが、発注者の仕事です。

仕事では、機器の条件が変更になったり、工事を計画している場所に想定外の埋設物があったりして、思いもよらない課題に直面することもありますが、実際に工事を行ってくれる現場監督さんや電気工事の関係者の方たちと知恵を絞りながら解決していきます。課題が解決できた時や、設計図通りに構造物が完成したことの喜びや達成感を感じる瞬間がとてもうれしく幸せです。

完成した基礎はほとんど土の中に埋まってしまって見えなくなりますが、重要な機器を支え、お客さまなどへ電気を届ける重要な設備を作る工事の一部に携わっていると思えるので、使命のある、やりがいのある仕事だと感じています。

東日本大震災による電力不足

東日本大震災が起こり、関東方面の電力が不足しました。そのとき、中部地方と東日本では周波数が違うため、簡単に融通が出来ないという問題がありました。そこで、岐阜県の高山市に周波数変換所を新設する計画があり、その造成工事における地質調査や動植物調査を担当しました。まだ開発されていない自然の山の中を歩き、冬には雪の中をカンジキを履いて歩いたことがとても印象に残っています。現在はこの工事の担当ではありませんが、「地図に残る仕事」の一部を担当できてうれしかったです。


育児との両立

育児休職から復職し、前述の変電所の土木工事を担当させていただくことになりましたが、とても不安に思っていました。育児中は勤務時間を短縮して勤務することができるのですが、工事を担当していると、現場立会など時間的に対応できないことが多いと思ったからです。ですが、上司をはじめ、周りの方々のおかげで、無事故無災害で工事を完工させることができ、それが自信につながっています。育児中の限られた時間の中でしか働けない今でも、大きな仕事を任せてもらえることがうれしくて、その期待に応えたいという気持ちになります。

育児中の土木女性社員が増えているので、復帰してからも女性が活き活きと土木の仕事ができるようなお手本になれるように、女性だから、育児中だからといって諦めることをしないで、いろいろなことに挑戦したいです。

耐震への興味からコンクリートの世界へ

大学では鉄筋コンクリート構造を専門に学びました。

専門に選んだ理由は、耐震に興味があったことと、鉄筋コンクリートは土木分野には欠かせない材料であり、鉄筋とコンクリートの複合材料ということで、そのメカニズムがとても興味深かったからです。また、担当教授の授業がとてもわかりやすく好きだったこと、研究室の先輩方が楽しそうだったこと、解析と実験のどちらからもアプローチできる研究ができる研究室であったことが決め手となりました。

大学院で研究した専門的なことより、学部で学んだ基本的なことが仕事に生かされています。大学時代の教科書を引っ張り出してきて、思い出しながら仕事をしています。

現在は、変電所の調査・設計、工事をしているので、土質工学やコンクリート工学が必要ですし、水力の分野では水理学も必要になります。

また、上司や社内の他部署への説明はもちろん、市役所などの行政に説明する機会が多く、コミュニケーション能力や説明能力も必要になります。大学院のゼミにおいて担当教授に説明をしたり、学会発表をした経験が役立っているように思います。

土木工学専攻を選択した理由

もともと高校時代は建築志望でしたが、1年生の時に土木分野の授業を受けて、橋やダムに魅せられました。「地図に残る仕事」という言葉を聞き、建築物よりももっと大規模なものを作りたいという気持ちを持ったので、2年時のコース選択のときに土木工学を選びました。

高校時代の土木に対するイメージはまさに工事現場の作業員さんのイメージでした。ヘルメットをかぶり、泥だらけになって、重機を動かしているイメージ。もちろん男性の仕事というように思っていました。ところが、入学後の授業の中で、土木=工事現場の作業員というイメージは大きく変わりました。土木と言っても、構造、材料、土質、水理、都市計画、環境、たくさんの分野があり、構造物を作るには、全ての分野が関係していることがわかりました。

本学は、土木工学のレベルはもちろんですが、先生方、先輩方、後輩も「人」が素晴らしいです。卒業してからも先生方は常に気にかけてくださいますし、先輩・後輩・同期、みんな別々の会社で働いていますが、何かあれば助け合える関係が築けたことは私のかけがえのない財産です。

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